この本にも何度か助けられた.が,気になる点がある.
集合論の部分を読んでみて感じたところは,以下の通りである.
★問の解答はすべて付けている.
こういうことは当たり前であるから,本来は評価の対象にはならないものだ.
一方,章末の演習問題には一切解答を付けないという徹底ぶりである.ある種の清々しさを感じる.
◆対応の定義が写像の定義のあとから出てくる.
定義3.6の写像の定義は不完全であると註3.15で指摘しているが,定義3.6での「対応関係」を一般用語と解釈すれば,この写像の定義で十分だと思う.
対応の定義を述べる前の「定義3.6の写像の定義は不完全である」という断りは必要だったのかどうか.
私だったら,註3.15の中で「写像を一般化した対応の定義を述べる」と書いて,続ける.
また,註3.15程度の内容であれば,写像の定義の前に対応の定義を挿入してやれば,それで十分である.
わざわざ読み手を混乱させるように構成した意図が私には分からない.
◆対応の定義を書くなら,始域の定義もあった方が良い.
対応の定義を書くなら,始域(始集合)についても書いた方がいい.
写像の場合は,定義域と始域は一致するから,定義域だけでも問題ないだろう.
しかし,対応の場合は,定義域と始域が一致しない場合があるから,それらを区別するためにも,始域の定義はあった方が良いと考える.
▲差集合の定義
このエントリーを書くにあたって,改めて同書を確認していたのだが,差集合の定義の文言が変である(定義1.17 p8).
「集合 \(A-B\) を \(A\) から \(B\) をひいた差集合という」と書いてあるが,これは「集合 \(A-B\) を差集合という」とした方がいいように感じる.
前者の表現だと,差集合には種類があって,そのうち「集合 \(A-B\) で定義される差集合」を「 \(A\) から \(B\) をひいた差集合」というのだと解釈できうる.
「 \(A\) から \(B\) をひかない差集合」というものがありそうである.
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いつも通りの重箱の隅をつつく内容だが,気にし出すと放っておけなくなる.
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