内田伏一「集合と位相」

この本も,集合・位相の教科書としてあげられることが多い.

集合論の部分を読んでみて気付いた点は以下の通り;

◆集合の相等の定義に気になる部分がある

定義自体に問題はないのだが,その頭に,

  • 二つの集合 \(A,\,B\) はまったく同じ構成要素から成るとき,すなわち,・・・

とある.

2つの集合 \(A=\{a,\,a,\,b\}\) と \(B=\{a,\,b\}\) は等しいが,全く同じ構成要素からなるとはいえない(だろう).

全く同じ構成要素から成る2つの集合は等しいが,その逆,2つの集合が等しい場合でも,全く同じ構成要素から成るとは限らない.

\(A\) には要素 \(a\) が2つ含まれているが,\(B\) には要素 \(a\)は1つしか含まれていない.

これを,全く同じ構成要素から成るかと問われれば,私は否と答える.

◆写像の定義にも気になる部分がある

写像の定義の後半に,

  • \(A\) から \(B\) への写像 \(f\) の \(B\) を終域または値域という.

と書いてあるのだが,そうだろうか.

\(B\) が値域と一致する場合もあるが,一般にはそうではない.

◆本のタイトルにも気になる部分がある

位相の準備編としての集合なら,本のタイトルから集合の2文字は省略したほうがよい.

位相の頭に集合という字面をつける理由を教えてほしい.本書の場合なら,集合の字面はせいぜいでサブタイトルあたりが妥当だ.

★定理の証明は省かれていない

当然のことだ.

ただし,問いについては,一部解答が省かれている.解答を省くぐらいなら,最初からその問いをのせなければよい.問いが簡単だから解答を省くというのは理由にならない.

また,細かいところを書いているのだが,気になるのだからしょうがない.

 

 

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