集合論の話しは久しぶりのような気がする.
今回は,ペアノの公理を満たす集合は無限集合であることを証明します.
まずはペアノの公理から.
定義.$N$ を集合とする.$N$ が次の条件を満たすとき,$N$をペアノの公理を満たす集合という.
- $1\in N$
- 単射 $\varphi\colon N \to N$ が存在する.
- $1\not\in \varphi[N]$.
- $N$ の部分集合 $A$ が次の条件を満たすとき,$N=A$ である,
- $a\in A$.
- $n\in A \Rightarrow \varphi(n)\in A$.
補足.ペアノの公理を満たす集合 $N$を定義したが,そのような $N$ が存在するとはいってない.
⬆ 例えていうなら,80点以上で合格という条件を決めても,80点以上の人がいるかどうかは別問題みたいなもの.なので,次の公理を追加するっと.
公理.ペアノの公理を満たす集合が存在する.
⬆ 無理やり感が強いが,まあこれで安心して次に進むことができる.
今回のテーマのひとつが無限集合なので,それを定義してみる.
定義(無限集合).$A$ を集合とする.$A$ のある真部分集合 $A’$ に対して,$A$ から $A’$ への全単射が存在するとき,$A$ を無限集合という.
要素が無限個あるのが無限集合ではないのかって?
君は何を言ってるんだ.無限を無限で定義して定義したことになるのかね?(煽り
補足.無限集合を定義したが,存在するとはいってない.
⬆ まあそういうことです.定義しても,その定義を満たすものが存在するかどうかは別の話し.
んで,ペアノの公理を満たす集合が存在するなら,無限集合が存在するよというのが次の命題.
命題.集合 $\mathbb{N}$ がペアノの公理を満たしているとする.このとき,$\mathbb{N}$ は無限集合である.
証明.ペアノの公理の 3. より,$\varphi[\mathbb{N}]$ は $\mathbb{N}$ の真部分集合である;$\varphi[\mathbb{N}] \subsetneq \mathbb{N}$ .
写像 $\varphi ‘\colon \mathbb{N}\to \varphi[\mathbb{N}]$ を $\varphi ‘(n) = \varphi (n)$ と定義すれば,$\varphi ‘$ は全単射である.
無限集合の定義より,$\mathbb{N}$ は無限集合である.□
ということで,ペアノの公理を満たす集合は無限集合であること,すなわち,無限集合が存在することがいえましたパチパチパチ
実は,ペアノの公理を満たす集合が存在することと,無限集合が存在することとは同値です.本当は,無限集合が存在するというのを公理に据えて,ペアノの公理を満たす集合が存在することを証明しようとしたのだが,証明を打ち込むのが面倒なので,ペアノの公理を満たす集合の存在を出発点にしたのでしたわはは.
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